ジンバブエが再び揺れている。法定通貨が日々目減りするのにあわてて、切羽詰ってビットコインに駆け込む人もいれば、外国に留学している子供への仕送り、資金逃避に利用する人もいる。その結果が凄まじく、国際市場では先週、ビットコインBTC=BTSPが過去最高の7888ドルと年初の7倍に達したが、ジンバブエの首都ハラレのビットコイン取引所Golixに至っては、なんと1万3900ドルと、年初の40倍まで暴騰している。
ジンバブエはかつて自国通貨がハイパーインフレによって紙くず化し、2009年に米ドルを法定通貨に採用した。しかし深刻なドル不足に陥った結果、今や国民の銀行口座にある「ドル」の価値は本当の米ドルに対して急落し、「ゾラー(zollar)」の異名をとるようになった。現在、現金100ドルを買うためには1月時点では120ゾラ―だったのに対し、現在は180ゾラーなければ100ドルと交換出来ない。まさに2009年の悪夢が甦っている人々は、自動車、不動産、株など、ハイパーインフレでも価値を失いそうにない物なら何でも飛びつく状態となっている。同国はまた、銀行がマスターカードとビザの決済を制限あるいは阻止しているため、海外への支払いを行うのが難しいため、ビットコイン決済を受け付けている外国の商店や企業からモノやサービスを買うために、国民はビットコインへ換金し続けている。また外貨を用いた海外との商取引には、ジンバブエ中央銀行の承認が必要で、中銀は燃料や医薬品など生活必需品の購入承認を優先、事実上の送金規制によりこれまた人々がビットコインに群がる要因になっている。
Golixのデータによると、10月に同取引所が取り扱ったビットコイン取引は100万ドル相当だったそうだ。しかしこれは実需の買いで有り、外国人はビットコイン取引にほとんど参加していない。理論的には、海外の投資家は国際市場でビットコインを買い、ジンバブエで約2倍の価格で売却することも可能だが、その際の問題は支払いがゾラーで行われてしまうことなのだ。
夏頃から再三流動性リスクのレポートさせて頂いている通り、FRBがバランスシートの縮小を決定し10月より粛々と履行し続けることで、流動性の悪い市場、新興国、発展途上国より資金が米欧の安全資産に逆流する可能性が高くなっており、ジンバブエを取り巻く環境はまさにこれを具現化しているのだと思われます。
(ロイター通信より一部記事抜粋)