現在リサイクル業者の大半は、金属を回収するために使用済みバッテリーを高温に熱する、「高温冶金法」と呼ばれるプロセスで、一般的にこれで得られるのはコバルトのみとなっており、リチウム抽出はさらに困難でコストが掛かる。CRUの試算では、炭酸リチウムに転換するコストを最大7000ドルに抑制しないと、採算が取れないとのこと。

ただ最近は技術の進歩によって、使用済み二次電池の安定確保が出来れば、リチウムを本来の用途に使用出来るように技術開発が進んでいる。ベルギーの非鉄金属大手のユミコアは、高温冶金法と湿式冶金法と呼ばれる化学プロセスを組み合わせ、コバルト、ニッケル、銅の抽出を行い、スラグからリチウムとレアメタルを回収している。同社の作業工程では、1回のプロセスでリチウムを分離・凝縮させ、コバルト、ニッケル、銅との合金を生成させることが出来るという素晴らしい技術だ。同社はすでにEV用バッテリーを年3万5000個処理できる7000トン級の実験プラントを稼働させており、リチウムイオンバッテリーの処理事業者として欧州域内で最も進んでいる会社として認識されている。リサイクルをテーマに投資をするならば、ユミコアが最善の選択だと欧州のアナリストは口を揃えて発言している。

2002年以来、米国リトリーブ・テクノロジーズは、カナダブリティッシュコロンビア州トレイル工場でリチウムイオンバッテリーのバッテリーリサイクルを行っており、コバルト、ニッケル、銅を回収しているが、生産量は4年で倍増約1200トンのバッテリーを処理している。同社は順調に増加しつつある二次バッテリーのリサイクルに対応させるため、2015年に同バッテリーの処理をする米国オハイオ工場を拡張。豪州リチウム開発企業ネオメタルズはカナダモントリオールにコバルト、リチウム、ニッケル抽出のための実験プラントを建設中、同じくカナダではアメリカン・マンガネーゼが、低品質マンガン鉱を処理するための技術を転用し、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、アルミニウムを100%回収出来るプロセスを構築し、特許出願中し実験プラントの段階に入っている。

現在EV販売は急成長を遂げているが、リチウムイオン電池の平均寿命は8~10年ほどとなっており、リサイクルに回るにはまだまだ時間が掛かるのが現状だ。ただ今後世界中でEVの販売が伸びれば伸びるほど、市場に出回る廃バッテリーが増加するのは至極当然となる。また現在寿命を迎えた二次電池は、日本の島嶼部などでもお馴染みのグリッドストアレージ(定置型蓄電池)として使用されているが、リサイクル技術が上がり、二次電池のリサイクルで十分に利益が出せるようになれば、定置型蓄電池に回っている分も回収出来るでしょうし、定置型蓄電池として使い道が無くなった二次電池も回収出来る可能性が有ると思われる。

いずれにせよ中国、欧州、インドなどEV政策へ舵取りしてきたということは、EVが爆発的な増加をする7~8年後にリサイクル事業が活性化していくことでしょう。

(一部ロイター通信より)