個人が建設する賃貸住宅への地方銀行の融資残高が、今年3月末時点で前年比7.2%増の13.8兆円に膨らみ、日銀による2009年の統計開始以降で最大となりました。日銀によると、アパートやマンションなど貸家業を営む個人への全国の地銀105行の融資残高は、2010年3月末の約8.8兆円から7年間で約5兆円増加。対して、大手銀行のこの間の融資残高は約2.4兆円減少し、総額8.6兆円と地銀より少なく、地銀の積極姿勢が際立っている形だ。背景には、地方経済の衰退に歯止めがかからず、優良企業への貸し出しが難しくなっていることが有ると思われます。企業向け融資は、金利の値引き競争の激化と日銀のマイナス金利導入で、預金と貸出金利の差である利ざやが一段と縮小。株式上場する地銀82社の2017年3月期決算では全体の約8割が最終(当期)減益に。このため、相対的に利回りの高い個人向け融資に注力しているのが実情で、貸家業向け融資の伸び率は、貸し出し全体(3.3%)を大きく上回っている。借り手側にとっては、2015年1月に相続税が増税されたことが大きな契機となった。所有する土地にアパートなどを建てると、更地のままで所有するより評価額が下がり、減価償却費も調整出来て納税額が減る「節税効果」が見込める。さらに日銀の大規模金融緩和で、建設資金を低利で調達しやすくなっていることも追い風となっていることも大きな要因だ。国土交通省によると、2016年度の貸家の建設着工戸数は前年度比11.4%増の42万7275戸と2年連続で増加し、2008年度以来の高水準となっている。 地銀による個人向けカードローン貸付や賃貸アパート・マンション向け融資の増加は、そう遠くない未来にきっと大きなしっぺ返しを被るでしょう。ただでさえアパート・マンションの空室率は上昇し続けている現在、今後の人口減少社会の本格化によって、空室率はより深刻になっていくのは容易に想像出来る。

(一部毎日新聞より)