1959年3月に豪州に現地会社を設立し、1963年4月に第1号「ティアラ(コロナ)」の組み立てを開始、これまで「カムリ」や「カローラ」、「オーリオン」、「アヴァロン」など累計345万1115台生産してきたトヨタ・モーター・コーポレーション・オーストラリア。同国内で54年の長きにわたって生産をしてきましたが、とうとう10月3日に生産を終了したことは先のレポートでお伝えした通りです。豪州での現地生産は、1925年にフォード、翌26年にはGM、59年にトヨタ、76年に日産、79年に三菱と、この5社で豪州の保護貿易政策の恩恵を受け、販売台数を稼いできました。完成車輸入の関税率は34.7%~57.5%と高く、現地生産していない自動車メーカーにとって長らく参入障壁となっていました。その後1983年にホーク首相の労働党に変わり、国際競争力を付けさせるために段階的に関税率を引き下げ、2000年には15%、2005年には10%、2010年には5%となったことで、現地生産のメリットはほぼ消滅。ホーク政権以降、日産が1993年、三菱が2008年、フォードが2016年、トヨタとGMホールデンが今年と、それぞれ撤退を余儀なくされたのはそういう背景なのです。元々この国の労働組合はかなり強く、保護貿易政策下でしか機能出来なかったと言えるかもしれません。有給休暇の消化は当たり前田のクラッカーで、仕事をして初年度は20日、その後勤続年数に応じて有給休暇は増え、勤続5年を超えると長期就業休暇がもらえます。さらに有給休暇を使わなければ(ほとんどのオージ―は使いますが…)翌年以降に加算、まとめて有給を取得することも可能で、1ヵ月以上の有給を使うのも普通です。むしろ有休を消化しないと会社から警告される始末。(実体験です。)またアーリーアロウワンス、レイトアロウワンス、ミッドナイトアロウワンス、土曜日は給料1.5倍、日曜日はダブルペイ、祝日はトリプルペイなど、日本では到底考えられないことでしょう。そういった中で、生産コストの高い豪州で自動車を製造し続けられる訳が有りません。別に撤退した企業が冷徹な訳でも無く、当然の帰結に過ぎないのです。自国生産が終了することで、今後中古自動車の輸入が有る程度解禁になるので、現地支店を開設する企業が増加中ですが、現地の労働規約を無視して労働させた場合、とんでもない裁きを受けることになるため、現地労働基準法にはくれぐれも留意して下さい。