環境保護の観点から欧州、中国、インドを始め世界各地で電気自動車(EV)シフト化の流れになっているのは、何度もレポートした通りです。これに合わせて欧米を中心にEV、PHV、HV用二次電池のリサイクル事業の本格化の流れが始まってきている。二次電池材料の「炭酸リチウム」、「コバルト」などを中心としたレアメタル、レアアースはEV化を先取る形で価格が高いもので数倍に暴騰しています。その動きを見て欧米や中国のリサイクル業者は、使用済み二次バッテリーから金属類をより低コスト、かつ高効率で抽出する技術を磨きつつある。現状は使用済み二次バッテリーが少なくリサイクル技術のコスト効率が向上していないが、今後劇的に増加する電気自動車(EV)を睨み、世界のリサイクル業者は企業努力を重ねている。
現在は年間100万台にも満たないEV販売だが、2025年には1400万台を超えるという試算も出ており、二次電池原材料の需要急増は火を見るよりも明らかとなっている。ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスの資産では、2021年までの追加需要はコバルトが年間3万トン、リチウムが同8万1000トンに。CRUの調査で、リサイクルで得られるコバルトが、現在の年間7110トンから、2021年には1万1600トン、2026年には2万4900トンに跳ね上がると試算、この数量は市場供給量全体の9.7%、17.9%に相当する。
EV先進国の中国では、昨年販売されたEV車輌が50万台と世界のEV販売の半分弱を占め、他の電化製品部材の一大生産国の中国は、EV車輌と同様にリサイクル事業を国策事業として育てていく予定で、他国や他の企業もチャンスを狙っている。カナダリサイクル会社アメリカン・マンガネーゼによると、「ハイエンド製品のコバルト酸リチウムイオンバッテリー約1000ポンド(約454キロ)からは、約6000米ドル(約67万5000円)相当の電極材」が回収可能で、「ローエンド製品の(NCA)ニッケル、コバルト、アルミニウムバッテリーからは、同1700ドルの同材料が回収可能とのこと。
現在ほとんどのEVは、NMC(ニッケル、マンガン、コバルト)を正極に、グラファイトを負極に使用したリチウムイオン二次電池を動力源としている。この二次電池生産で肝となるコバルトは、世界で供給される大半がアフリカのコンゴ(旧ザイール)に依存しており、採掘付近では紛争が頻発、それに呼応するようにコバルトの価格は今年に入ってすでに2倍を超えている。主にチリで採掘されているリチウム供給については、今後アルゼンチンやオーストラリアでも新規生産が予定されているため、現段階ではそれほど大きなひっ迫は見せていない。それでも今後世界でEVが増加するという見通しから、今年に入りリチウム価格は30%以上上昇、1トン当たり1万2000ドルと過去最高水準に達している。
(To be continued)