自動車の動力性能や燃費性能を高めるために重要なウェイトを占めるトランスミッション、本邦市場では2ペダル式の自動変速機が95%を超えておりますが、世界市場ではまだまだ3ペダルのマニュアルトランスミッションが多いのが現状。ドイツZF社の分析によると、車輌重量6トン未満に占めるMT比率は2009年データで52%に達しているそうです。MT車のメリットは伝達効率の高さと圧倒的なコストパフォーマンスで、効率を重視する欧州や、価格を重視する新興国で支持されています。ただ今後自動運転化技術が更に発展すると、トランスミッションの潮流は2ペダルの自動変速機に移行すると見込まれています。CVTは、常に最適なエンジン回転数を維持出来、通常のATより燃費が稼ぎ易いことがメリット。また部品点数が少ないことも、コストや重量の面で優位に立っています。その一方ベルトとプーリーの摩擦ロスが有るため、高速巡航の燃費では分が悪く軽自動車やコンパクトカー等で積極的に使用されています。MTのクラッチ操作を自動化したATは、構造がシンプルでコストが安く3~9速ATまで選択出来るが、変速時にショックが多少出てしまうのがネック。この問題を解決したのが2003年にVW社が実用化したDCTで、ギアを奇数と偶数に分けて2列で配置し、2枚のクラッチを交互に繋ぐことでショックの少ない素早い変速を可能にしました。トランスミッション自体はMTと同じ構造のため、MTの工場で生産出来るのも大きなメリット。ただ構造が複雑なため制御が難しく、ホンダが独シェフラーと共同開発したi-DCTで度重なるリコールを連発したのが記憶に新しい。次世代型と言われておりますが、アイシンAWの関係者は、湿式タイプでは油圧ポンプ等のロスも有り、伝達効率はATと変わらないと指摘しています。今後第3極にDCTが成り得るのか、業界関係者並びにユーザーは注目しています。
(日刊自動車新聞より)